遺言を作成するためには遺言能力が必要になります。意思能力を欠く者の遺言は無効とされますが、成年被後見人は遺言を作成できるのでしょうか。
成年後見制度
成年後見制度は、平成12年に障がいのある方も家庭や地域社会で暮らせる社会にしようというノーマライゼーション、本人の残存能力の活用、自己決定の尊重の理念のもと、本人の財産と権利を守るためにスタートしました。
元々「禁治産・準禁治産者宣告制度」がありましたが、社会的な偏見や差別を生む等の問題があったので、新たな制度としてスタートし、もう随分世間に浸透しています。
成年後見制度とは、判断能力が不十分なため契約等の法律行為を行えない人を後見人等が代理し、必要な契約等を締結したり財産を管理したりして本人の保護を図るものです。
制限行為能力者
その為、一定の法律行為が制限され、家庭裁判所の審判にもとづいて、行為能力(取引を行う資格)を制限しています。
行為能力を制限された者を制限行為能力者(せいげんこういのうりょくしゃ)といいます。
この制限行為能力者には、「成年被後見人」の他に、「被保佐人」「被補助人」「未成年者」と4種類あり、適切な取引が行われるように保護されています。
未成年者の遺言
遺言については、未成年者でも満15歳になれば、単独で遺言ができるものとしています。
しかし、意思能力は必要とされています。
被保佐人、被補助人の遺言
被保佐人、被補助人についても、遺言能力の制限はありません。
この類型の方達にも、意思能力は必要とされています。
成年被後見人の遺言
では、判断能力がなく、遺言をする意思能力がないとされた成年後見人は、遺言を作成することができるのでしょうか。
民法に成年被後見人が遺言のできる場合が規定されています。
成年被後見人であっても、常に判断能力を欠いている状態というわけではありません。
一時的に判断能力が回復していることについてを医師2人以上が立会、事理弁識能力があったことの付記があれば、有効な遺言書になります。
上記の要件を満たせば、成年被後見人は遺言を作ることができます。
遺言の方式として、「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」のいずれの形式でも遺言書を作成することができます。
成年被後見人が代理して作成する遺言書
成年後見人は、法定代理人として、成年被後見人に代わって法律行為をします。
しかし、成年後見人は身分行為を代理して行うことができないため、遺言を作成することはできません。
被後見人から口頭で伝えられたものを書き記したものなども、無効の遺言になります。
被後見人の遺言作成は必ず上記の法律要件を満たした、本人が作成したものでなければなりません。
まとめ
成年被後見人や未成年者が、遺言を残せる場合をご説明致しました。
幼い頃から知的障害者になられた方には、国から保護を受け交付された給付金が、かなり貯まっていることがあります。
また、将来を心配した両親が、財産をその子に残しておくことも珍しくありません。
成年被後見人の中には、通常の会話に支障がなく、保佐や補助の類型に見える方もいます。
しかし、実際には、成年被後見人が遺言書を作成することは、かなり難しいと言えます。
一時的に回復する様な方は、日常生活を自身で送ることができる方が多いので、精神科の先生が日常の精神状態を把握していないと思われます。
また、日常的に精神状態を把握している成年被後見人の方が、一時的に回復すること自体がまれであると思われます。
後々のトラブルを防ぐために、公正証書遺言が望ましいのですが、公証役場で遺言書を作成する場合にも、特に慎重を期されますので、事理弁識能力がないとの判断をされてしまうかもしれません。
成年被後見人の方が、事理弁識能力が回復した場合には、後見解除の申立を家庭裁判所に行い、日常生活に支障がない様子になってから遺言書を作成することの方が、現実的です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。




